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大石神社 (風間浦村)

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青森県下北郡風間浦村易国間字家ノ上。集落を取り囲む海岸段丘上から擦文式土器が出土しており、北海道文化の南進と関係が深く、また桑畑からは縄文前期の土器、後期の貝塚が発見されています。
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まずは「易国間」について触れたいと思います。易国間は下北半島先端部の西北端、易国間川及び目滝川河口に位置し津軽海峡に面します。康正3年下北図には「湯沢野」とみえるも委細不明。地名の由来については往子蠣崎蔵人が最宝院の別当大締を蒙古・韃靼などに遣わして軍馬や兵糧を購入したことがあり、これらの輸送船が湯沢野浦に入津していたことから「異国ノ澗」とも呼ばれましたが、蠣崎の乱後に異国間にしたと伝えます。また、アイヌ語で「熊の通る谷間の横山」の意の「イコツクマ」に由来し、興国年間に国司北畠顕信が国司代南部政長に命じて巡回させた時、この浦で韃靼(満州)の使者を引見し、以来交易船が往来したことから、異国船のくる浦として異国澗と名付けました。菅江真澄の『牧の冬枯』には、「異国間といふは、いにしへこまうどのはなたれ来りしよりいふとも人のいへり…」とあります(※「異国間というのは、むかし高麗人が漂流してきてからいう地名だと、ところの人が語った。またこの浦にアイヌが住んでいて、その子孫は今もいるという。」)。なお、『牧の冬枯』では、菅ノ尻を「杉ノ尻」、桑畑を「桑端」と記載。また『原始謾筆風土年表』天明3年条に「異国間足高、脇野沢発府羅と云る蝦夷人々の末孫にして、蝦夷稗と唱へ家々より量り出せしは何年頃にや始けん、明和8年に止しかと」とあり、海峡の蝦夷を統率した足高酋長が藩主より毎秋蝦夷稗をあてがわれていたとされます。足高(アシタカ)の後裔は長兵衛といい、後に奥戸村(大間町)に移った伝えます。
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大石神社の貞享4年の棟札には「夷国間」と書かれており、国誌にも「昔は湯の沢と云ひ、後に夷国間と書しか夷の字を忌て今の字に改」とあります。「湯沢野」であるか「湯の沢」であるかについての確固とした判断材料はなし。「異」と「夷」については同書に「昔アシタカと云蝦夷種住居し、村を夷語にイコンクマと云しよし」とあり、江戸中期頃まで海峡の蝦夷を統率したとされる蝦夷酋長の足高との関連づけがなされています(昔アシタカというアイヌの酋長が住みその地をエコンクマと称した)。「牧の朝露」にも「いこんくま」とあります。「易国間」に改められたのは文化2年南部利敬が巡国の際、穏当ならぬとしたためで、同6年再度布達されたといいます。但し、「易国間」の文字は領内限りとし、幕府への提出文書類は従来どおり「異国間」の文字を当てたとされます。アイヌ語に由来する説には「イコンクマ」以外にもあり、「貫柱の小山ある場所」の「イコンクマ」、「貫柱の山流」の意の「エキンクマ」など。字小易国間は天保年間の史料に古易国間と書かれましたが委細不明。邦内郷村志には異国間村、正保4年南部領内惣絵図に「イコクマ」とのみ見えます。
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手水舎。水盤紀年銘明治4年9月。
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石灯籠二対・一基(明治15年・明治3年3月・紀年銘不明)。
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延宝6年(1678)9月17日勧請。御祭神は素盞鳴命。天照大神・倉稲魂命を合祀。御神体は光を発する神石。別当光明坊。「邦内郷村志」に明神堂とあり「俚人云磯大明神」と記載。
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例祭日9月17日(16-18日)。他町村の船山(船山車)は北前船を模したものが多いのですが、易国間の船山の原型は「おこし舟」(漁船型)を模倣したものだと言われています。「ヤレヤレヤレヤレー」等と声をかけながら、初日は易国間地区を、2日目は大川目や新町地区を練り歩きます。易国間漁港では海上安全祈願の神楽を行い、村人は熱心に祈りながら見守ります。また、最後の大石神社鳥居前で行われる神楽演舞は息を呑む迫力。
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延宝6年(1678)勧請造立後、貞享4年(1687)、元禄4年(1691)7月、宝永2年(1705)秋、享保4年(1719)、慶応4年(1868)9月に再建。その後も再三改築していますが、原形はほとんど変わっていないようです。明治6年5月村社に列せられ、同年6月に桑畑村湯ノ上鎮座八幡宮(桑畑八幡宮)を当神社に合祀、同7年八幡宮を分祀。明治40年4月19日神饌幣帛料供進神社に指定。昭和25年1月31日国有境内地譲与許可。
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棟札として、享保4年(1719)再建棟札あり。元禄4年(1691)池田金三郎本尊奉納の棟札あり(※但し、現在その本尊は見当たらないそうです)。勧請された延宝6年から9年後の貞享4年に社殿を再建した棟札には「大磯之大明神之社宮」と書かれています。東通村教育委員会発行の「不動院」には「異国間大神宮 初代和光院 和光院生所久慈 万治元年當村へ来、大神宮別當退轉ニ付氏子依頼別當相勤申候 大神宮建立寛文五年林鐘、本社高サ六尺横三尺五寸 大石明神本社建立延宝六年九月十七日 両社拝殿一ヶ所三間四間神休無之 二代光応院」とあります。「新撰陸奥国誌」には「中峯稲荷神の鎮座は寛文五年と伝わっている。」とあります。よって大神宮と稲荷神は同年(寛文5年・1665)に勧請されたことになります。現在、稲荷神社の中に奉安されている祠は大神宮の祠として建立されたものと考えられています。また、大礒大明神として勧請された延宝6年には大神宮と大磯大明神が合祀されていたと思われます。「風間浦村誌」に御神体について次のようにあります。「易国間の海岸に一つの奇石があって、村中の子供等は綱を結付けて曳転ばして遊び戯れて居たが、夜になると此の石が光りを発して父老の注意する処となり、村民は占師の言に隨うて、鎮守の御神体として秘め奉る事にした。大石の神号は此夜光石に基くともいうし、或は又管の尻に神石として崇めたる立石に因むともいわれる。」。御神体は縦25cm、横30cm、高さ60cm位の白木の箱に入れて奥の院に鎮座。よって夜光石がもとで勧請され、社名を大石大明神にしたと考えられ、その後、「礒大明神」とか「大礒之大明神」などと村人から呼ばれることもあったと考えられます。このように大神宮の勧請が大石大明神(素盞嗚命)よりも早いのですが、合祀の段階で主神が素盞嗚命になったと考えられます。
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大石神社本殿に「蝦夷地・場所図」などと呼ばれる絵馬が掲げられています。平成29年のニュースにて、青森県風間浦村は同村易国間の大石神社にある絵馬を本年度中にも村指定文化財に指定する準備を進めているとありました。絵馬は安政2(1855)年6月吉日、易国間出身で蝦夷地域で漁場を監督する「惣番人」や戸長を務めたとされる能登伊助が奉納(願主能登伊助惣番人啓白)。和人とアイヌ民族が地引き網漁を行う様子が描かれており、研究者は「蝦夷地域の当時の様子を詳しく伝える史料。下北と蝦夷地域の密接な関係を象徴している」と語っています。大石神社の絵馬は、北海道開拓記念館(現北海道博物館)学芸員で北海道美術史を研究していた林昇太郎さんの論考をまとめた書籍「アイヌ絵とその周辺」(2010年、故林昇太郎氏遺作論集刊行会編)で紹介されています。同書によりますと、絵馬の大きさは飾り金具が施された漆塗りの額縁を含め、縦約105.6cm、横約166.2cm(画面寸法92.7cm×153.5cm)。作者は幕末期、松前を中心に活動した絵師の早坂文嶺(山形県出身)。髷を結っている和人と散切り頭のアイヌ民族が地引き網漁を行う様子のほか、山や川、神社、アイヌの伝統家屋「チセ」、蔵、高床倉庫、クマ檻、畑、運上屋(隣に高札場)、薪の貯木場など集落の様子が丁寧に描かれているそうです。
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拝殿は見れませんが神額には「大礒大明神」(弘化年中)とあるそうです。向拝の神額には龍。
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唐破風懸魚・木鼻等。
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社殿と繋がっている建物。変わった造りですね。
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ちゃんと鳥居もあります。
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稲荷神社。
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社殿横へ。
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寛政6年(1794)に越後から北前船で運ばれた神輿を本殿に年中奉安。
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本殿裏、奥にも建物が見えましたが、草が伸びており断念。
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狛犬一対。
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紀年銘不明。台座は失われているようですが状態は良好です。獅子山型だったのかな。
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狛犬台座に卵のような石。
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狛犬一対。
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紀年銘不明。
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体には願主池田金三郎と彫られており元禄4年頃と推定。 
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オブジェのような謎の石。
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征露紀念之碑(宣戦明治37年2月10日・旅順降伏明治38年1月2日建設・正四位勲三等巖谷修書)。
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境内社。
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御幣で棟札見えず。神前幕奉納者の住所が室蘭市東町の方です。
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境内社。
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馬頭観世音。
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境内社。
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石祠。仏像は判別できず。
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境内からの眺望。
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